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【No.10 平成15年6月】

NHK教育テレビ「視点論点」に出演しました

(6月13日 島代表がNHK教育テレビ「視点論点」に出演しました。以下はその際に用意した原稿です)

2003年6月9日
日本アイアイ・ファンド代表、マダガスカルアイアイ・ファンド名誉会長
島 泰三

視点論点原稿 「アイアイの保護と国際協力」

皆さんは、アイアイという動物をご存知でしょうか? 歌に歌われているので、名前だけはよく知られていますが、アイアイはアフリカの東、インド洋に浮かぶマダガスカルという島だけに住む原始的なサルの一種、キツネザルの仲間です。
実は「アイアイ」という名前は、マダガスカル語の「ハイハイ」が語源ですが、「よくは知らない」という意味です。その名の通り、世界中の動物学者にも生態がよく知られていない謎の珍獣です。
その姿は、「リスの歯、コウモリの耳、サルの目、そして例のない針金のような指」を持っていて、キツネザルの仲間でも特別に変った形をしています。

この動物は私が最初にマダガスカルに行った、今から約20年前、1983年ころにはほとんど絶滅しただろうと考えられていました。
2001年には、ひとつがいのアイアイが上野動物園に贈られましたので、日本でも見ることができますが、現地ではアイアイは絶滅寸前の非常に数のすくない動物で、その生息数は一説では千頭を切っているとされ、生息地もごくかぎられています。

私は当時、テレビの取材でアイアイを探しにマダガスカルに行きましたが、ほとんど目撃例がなく、また地元の人々からは不吉な動物とされていて、見つけ次第に殺すか、みなかったことにするというありさまだったので、アイアイの情報は集まらず、調査は困難を極めました。

しかし、マダガスカル北東部の無人島で十五年ぶりにアイアイを確認し、そこでアイアイの主食がラミーという水辺の大木の種子(タネ)であることを発見しました。この発見のおかげで、これまで知られていなかった北西部、西部、南部でのアイアイの生息地をみつけることができ、私はその後6年間にわたり研究のためにマダガスカルを訪ねつづけました。

そうしたいきさつもあって、1990年から2001年までは、日本の国際協力事業団の専門家として、首都にあるチンバザザ動植物公園に「霊長類学の指導」という名目で、三回、合計6年と3ヶ月間派遣され、「霊長類学の研究指導」のかたわら、アイアイなどの希少な動物の繁殖や自然保護区の選定、そして日本の動物園や研究機関との橋渡しを行ってきました。
アイアイとの私の付き合いもあしかけ20年になろうとしているわけです。

私がマダガスカルに惹きつけられたのは、なんといっても、そこが「日本とは対極にある世界」だからです。
日本は近代工業の先進的な国ですが、マダガスカルは自給自足の農業国です。
また、アフリカのすぐそばにあるにもかかわらず、マダガスカル人の先祖は、遠いインドネシアの島々からカヌーでインド洋を渡って、移り住んできたと言われています。つまり日本人とマダガスカル人は同じアジア人でもあるわけですが、気候や自然環境などの違いからまったく異なる文化をもつようになったわけです。

また、マダガスカルの生き物はまったく独特なものです。マダガスカルはアフリカ大陸から古い時代に切り離されたため、この島にすむ動物や植物のおよそ六割までが地球上でここでしかみられません。生きた化石が島中にあふれているといっても過言ではないこの島は、私のような動物学者にとっては、まさに夢の島です。

この夢の島に、最近になってアイアイの新しい生息地を見つけました。マダガスカル北西部のマナサムディ山地は、アイアイの楽園でした。川原にはアイアイの食べたラミーの種子が一面に落ちていました。この森では、アイアイの巣を三百メートルの間に四つ見つけたほどで、私はこれほどの数の巣をまとめてみたことは、この森以外にはありません。 この森には、アイアイだけでなく多くの珍しい動物たち、たとえば絶滅危惧種であるマダガスカルトキやマダガスカルピューマ、そしてその翼の先と足の裏に吸盤を持っているサラモチコウモリなどがいました。この森はマダガスカル有数の野生の宝庫なのです。

しかし、この地域はそれまで保護の網がかぶせられていなかったために、多くの森が焼き払われていました。
焼畑農業と牛の放牧や伐採などが、アイアイのすむ森林を破壊しています。マダガスカルではこのようにして一年間に15万ヘクタールから30万ヘクタール、つまり東京都全域と同じ面積が年々失われ、このまま続けば、今後30年間で、マダガスカルのすべての森林が失われるだろうという予測さえされています。

マダガスカルのGNPは日本の130分の1以下で、自然保護の予算がなく、アイアイのように貴重な野生動物の保護にも海外からの支援の手が欠かせません。
マダガスカル人はアジア人であることを誇りにしていて、日本人にも強い親近感を持っています。そこで日本の援助にかける期待も大きいのです。

20年間にわたる「研究」と「国による途上国援助」をマダガスカルで経験したことで、私は国際協力で実質的な成果を挙げるには、持続性が必要だということを痛感しました。
「国による途上国援助」では、プロジェクトの期間は短く、野生動物などの保護は他の経済協力よりも下位におかれることが多く、肝心の地元も動物保護の事業に関心を示さないなどの問題があります。活動を粘り強く続けることによって互いの間の信頼感や連帯意識を作り上げないかぎり、国際協力の実質は生まれません。

私は国際協力事業団の派遣専門家としての任期が終わった年の翌年、2002年に日本とマダガスカルでアイアイを保護するために「日本アイアイ・ファンド」を設立しました。まず現地の人々二十人の一年間分の賃金にあたる3百万円を基金として集め、マダガスカルでの活動をバックアップする体制を作ったわけです。

去年10月にはマナサムディ山地の一画に「アンジアマンギラーナ自然保護区」が指定されました。アンジアマンギラーナとは「輝く砂」という意味です。今年二月にはマダガスカル政府からこの自然保護区の管理をアイアイ・ファンドに委託する認可を得ました。 面積一万四千三百八十ヘクタール、南北三十一キロ、つまり東京駅から横浜駅をすぎて保土ヶ谷駅に達するあたりまでの距離に対応する地域が、もっとも新しいマダガスカルの自然保護区として出発しました。

ここでの活動の主なものは、保護区の森の生態調査を行って、その貴重な動物植物のリストを作りあげ、地元の住民とともに熱帯雨林の木々を植え、森を再生することです。また次の世代にも自分たちの国の貴重なアイアイたちに誇りを持ってもらうために、保護区周辺の小学校に図書館を作っています。

援助額においては世界屈指の日本ですが、顔が見えない、感謝されないとの辛口の評価もしばしば耳にします。また、日本国内でも成果の見えにくい途上国援助に対し、援助疲れの声も聞こえてきます。しかし、国際協力では粘り強い継続する活動によって、お互いの間の信頼感と連帯意識を作りあげることが必要です。そのためには、お互いにとって有益な、世界的な仕事を実現しているのだという確信がなくてはならないでしょう。
マダガスカル人に「日本はなぜアイアイを保護するのか」と聞かれたときに、「日本ではアイアイの歌を誰もが知っていて、子供たちも学校でその歌を歌っている」といえば、非常な驚きをもって受けとめてもらえます。また日本人にとっても歌に歌われる「南の島のおさるさん、アイアイ」は、マダガスカルを身近に感じることのできる存在でもあります。
今、日本とマダガスカルのアイアイ・ファンドは、「アンジアマンギラーナ自然保護区」を、お互いの子供のように、ふたつの国のふたつのNGOが協力して育てあげ、民間レベルでの永続する協力関係を作って行こうとしています。

このアイアイが、遠く離れ、文化も社会も異なるふたつの国を親近感と協力の絆で結ぶシンボルになることを願って、今後も活動して参りたいと思います。

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