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【No.30 平成22年9月】

「愛南町での環境教室を終えて」

広く皆さんに愛南町の御荘湾干潟の重要さを知っていただくため、平成22年7月に愛媛県南宇和郡愛南町で開催されたワークショップ、講演会を終えて、島泰三代表が環境教室実行委員長様へ送った御礼の手紙の内容をご紹介します。



 どくとるアイアイの環境教室実行委員会
  委員長 様

日本アイアイ・ファンド代表  
理学博士 島 泰三   

「環境教室」の報告に代えて
「環境教室」開催にあたって、多大のご尽力をいただけたことを心から感謝いたします。
そのうちに『翼の王国』が届くと思いますが、松野町の「虹の森公園おさかな館」で御荘湾の特別展示に組み入れて愛南町を紹介し、「水族館紀行」の幅を広げることができました。こうして、四国愛媛県の海の宝物、御荘湾がまず空の旅で広く知られることになると思います。
もうひとつ、報告します。
この8月12日に、皇居で天皇陛下の侍従にお会いして、最近の私の本を差し上げるとともに、御荘湾のドロアワモチの映像をお見せしました。侍従は海洋生物学者である陛下の研究上の同僚なので、たいへん興味ぶかそうに「これは知らなかったなあ」とおっしゃって、「干潟は大切です」と繰り返し強調されていました。
御荘湾は国の宝です。いつかは、そのことを全国民が理解する時が来ると思います。

以下、余計なことだと思いますが、生き物屋としての提案です。

一、御荘湾の豊かさとその保護について:調査と記録と教育の大切さ
「おさかな館」の特別展では、幅1キロ、奥行き6キロの愛南町御荘湾の驚くべき生物相が、紹介されていました。御荘湾では「絶滅を危惧されている」貝類、カニ類、エビ類合計87種が確認されています。それは、今いる種類の全部ではなく、他の海岸からはいなくなったところが多いので、「絶滅を危惧されている」種類だけなのです。陛下はトビハゼの研究家ですが、そのハゼ科だけで御荘湾には8種も住んでいます。
御荘湾の特別さと大切は、どんなに強調しても強調しすぎることはありません。
私たちはこの四年間、全国の水族館を巡って、日本列島の津津浦々の海岸を旅してきましたが、旅をすればするほど、日本列島とはいかに長く、遥かなものか、と思うのです。しかし、それがどれほどのものであろうとも、ドロアワモチばかりは長崎県佐世保とここにしか、「もういない」のです。
ドロアワモチをナメクジの類というのは、ちょっと抵抗があります(このなんともいいようのない生き物について、説明を求められた「おさかな館」の館長は、そうおっしゃっていましたが)。ドロアワモチ(イソアワモチ科)とは、干潟にすむ貝殻のない小型アワビとでも言うべきでしょう。ドロアワモチは干潟の表面で泥を食べ、その中の栄養分をこしとって泥で干潟に細い線模様を描く稀有の絵描き動物です。干潟の浄化に役立つ彼らの生き方も紹介する必要があるでしょう。
ドロアワモチと干潟の生き物を、データで、文章で、写真や映像で、愛南町の人々に紹介する必要があります。侍従がおっしゃったように、「干潟は大切」なのです。海と陸のはざまで、汚れが清められ、命が生まれるところだからです。
愛するためには、まず知らなくてはならない、ということは、古今の真理ですが、ドロアワモチはまず知るべきものの、その筆頭でしょう。

二、健康安全食品生産地の大切さ
私の娘は孫が生まれて以来、食品の安全には極めて厳重になり、無農薬あるいは低農薬の食品を選ぶこと、自然食を考えること、飲み水の浄化器を購入すること、と私たちも管理されるようになりました。この健康に留意した、安全な食品を求める声は、かつてはごく一部の変人達の主張でしたが、今では企業に利用されるほど一般化のものになっています。
汚染された土地、汚染された空気と水の世界、大都会に住む人間たちは、飢えた者のように、健康な食品を求めています。その例を埼玉県小川町の有機農業の村に見ることができます(新聞記事参照)。この記事で紹介されている小川町のとなりの「ときがわ町」の豆腐屋を先日見てきましたが、大変な盛況でした。
地方と都会という区分ができて、地方はひたすら疲弊するままという構図は、地方が都会の食料生産地となって、農薬漬け、抗生物質漬けになり、都会以上に健康な地域ではなくなってきたという実態があります。そういう汚染には「愛南町は違う」と信じています。ドロアワモチが、健康な環境とはこういう小さな生命が生きていることだ、と証言していますから。
私たちはすでに美生柑など愛南町産の食品の信者ですが、ぜひ、愛南町が健康な食品の産地として、日本と世界に名前を知られるところになって頂きたいと思います。そのための取り組みをすでに始めておられるということを、聞き知ってとても心強く感じています。

三、ゴミ処理と排水処理の大切さ
愛南町を日本に誇る環境優良地域にするために重要な措置は、ゴミの処理と排水の処理だと思います。すでに、各家庭用の浄化槽設置の取り組みをされていること、環境浄化酵素「あいあい」を利用されていること、を伺いました。それは、実に大きな希望です。さらに進んで、本格的な下水浄化施設、ゴミ処理施設を町に設置することができれば、御荘湾をはじめとする町内の海を浄化することができ、生産性を上げることは、もちろん、日本全国に対して愛南町の食の安全性を広く知らせることに役立つと思います。
愛南町が日本に誇る環境優良町であることを実地の調査によって明らかにし、この環境改善をさらに推し進めると宣言し、町ぐるみで老若が参加する「環境優良町づくり宣言をする」ということも考えていいのではないでしょうか?


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夏の祈り

ドロアワモチを紹介されたあの7月31日、私はこのままずっと石垣の堤防の上に坐っていたいと思いました。目の前に、あまりにも多くの命に溢れる驚きの干潟が広がっていたからです。今回、『翼の王国』の「松野町虹の森公園おさかな館」の文は、この干潟の情景を「ちょっとやそっとでは語りつくせない」と終えました。それは、この干潟の情景を「語りつくさせてくれよ!」という提案でもありました。

陽に焼けた熱い石垣の上に腰を下ろし、切りもなく鋏を振るカニたち、水面を跳ね跳び、石垣に吸いつくトビハゼ、浅い川の流れに群れる小魚、そしてゆっくりと干潟の上を動き、あとに泥の線を描くドロアワモチを見ていると、遥かな昔の幸せな子どもの日々の記憶が蘇る。
かく在りし日のなつかしい命のあふれる海辺の景色が、ここ御荘湾にいつまでも残ることを心の底から祈り始める。
この国を守りたまいし神々の社は、この海山の風景のまぢかに鎮座ましまして、人々の尊崇を受け、祈りを受けて、父祖らの魂とともに夏祭りの賑やかな諸人の集いを見守っているのだから、この切なる願いも受け入れたまえ、と。
この海山の小さな命たちがこの国に絶えることなく、いつまでも子どもらの遊びの庭のそばに住み続けることを、旅人われは、かく申しあげ、かく祈りたてまつる。

かすかなる泥の干潟の命さえ
わが国神よ
守らせたまえ




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