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【No.53 2024年3月】

「日本アイアイ・ファンド(NAF)2023年度の活動報告」

日本アイアイ・ファンド代表
島 泰三

2022年11月、3年ぶりにマダガスカルを訪れた時、何かまったく新しい旅のような感じでワクワクドキドキしたものですが、結局「なるようにはなる」としか報告できませんでした。1年後の2023年11月にはこちらの老化は進み、とうてい十分とは言えない体調で、ただ「生きて帰る」だけを目的に出発しまた。
今まではマダガスカルに行く前には「今年こそはラミーに花が咲いていてほしい」と念願し、咲いている花の夢を見ていたのですが、それさえ忘れていました。
けれども行ってみれば、鳥は歌い、カメレオンは走りまわり、なんと!ラミーに花が咲いていました。よくよく見ると果実もついています。スアビナ管理人はバオバブにも花が咲いたと言い、アンジアマンギラーナの苗畑でもラミーは熟していました。大自然はまたしても、こちらのちゃちな思惑をはるかに超える舞台を用意していました。
もっとも、首都の渋滞は断末魔の状態で、地方道路の路面はますます悪くなり、停電と断水が追い打ちをかけて社会インフラは末期症状で、活動を維持するためにあらためて生活基盤を立て直すことから始めなくてはなりませんでした。
そのくだくだしいあれこれはともかく、今年はラミーの結実という25年間待ち続けたその一点に絞って報告をいたします。
今さら「ラミーとは一体なんだ?」と問われる方はいないと思いますが、これはかんらん科カナリウム属(Canarium madagascariensis)のマダガスカル固有の高木で、その種子の子葉はアイアイの主食です(為念)。



チンバザザ公園のラミー結実 2023年12月16日撮影

アイアイとラミーの25年間
1998年12月は1994年12月のアイアイ世界初映像に続く、新しい展開の時でした。


アイアイ「12月10日夜、妊娠中のアイアイ(マンジア、推定年齢16歳)の巣箱を調べ、赤ん坊(体重200グラム)を確認しました(写真上)。」(友人への手紙)
ラミー「12月24日木曜日曇り、ラミーの芽は31本出ている。どんどん増える。トマトに抑圧されて、ラミーの芽の出かたの悪いものがある。ラミーの苗を日当たりから竹の覆いで守っている。」(日誌)


(写真上:右端が最初の子葉が種子から抜けようとしているところ。左端は最初の本葉が出たところ)

1999年
アイアイ 「1月19日火曜日、書記兼運転手のディダを午後からアンジアマンギラーナに派遣してアイアイの子ども(ソア♀)を保護。」(日誌)
ラミー 「2月1日月曜日晴れ、先週木曜日に竹の簾を買ってきて、ラミーの日除けを作った。ラミーの新芽は直射日光に弱いので、どうしてもこれが必要である。現在ラミーは46本。少し減ったのは、枯れる苗があるためだ。」(日誌)
「2月2日晴れ、アンジアマンギラーナ村長はこの間2回もチンバザザ公園にやってきて訴えた。『今、私の村では乾期の最盛時の10月には、井戸も川も干上がって、水汲みの女性たちは午前2時から水源に向かわなければならず、それでも生きて行くのにかつかつの水しか得ることができない。水をわが村に引くためのプロジェクトにどうか協力してほしい』と。彼はその飲み水のためなら、アイアイの保護も森の保護もしようという。」(日誌)
12月、アンジアマンギラーナ村内に調査基地(アンタナンバザー)落成。

2000年
『マナサムディーアンジアマンギラーナ地域森林における環境教育のための生物学的社会経済学的調査報告』(F.ラコトンヂャパラニ・島泰三他編)発表。

2001年
アイアイ 8月、アイアイ2頭(ソアとマミルア♂)チンバザザ公園から上野動物園へ。
ラミー 3月、発芽したラミーのうち30本はチンバザザ公園に、8本はスアビナ(日本アイアイ・ファンド事務所)の敷地に植えられた。
(写真下:チンバザザ公園の池際に植えられたラミー)


2002年1月25日 日本アイアイ・ファンド発足

2003年
3月28日、アンジアマンギラーナ監視森林の管理が始まる。
7月9日、上野動物園でソアとマミルアの第一子ファーヴィー♀誕生。

2004年
12月8日、ソアとマミルアの第二子ニリナ♂生まれる(ニリナは2014年サンディエゴ動物園へ)。
アンジアマンギラーナ監視森林の境界標識建設。
(写真下:アンジアマンギラーナ川辺のラミー巨木2004年)


2006年
「トヨタ環境助成プログラム」によるアンジアマンギラーナ保護区周辺村落での衛生管理のためのプロジェクト開始(助成期間3年間)。

2008年
アイアイ 10月12日、アンジアマンギラーナ保護区でアイアイの親子を撮影。
ラミー ラミー植林計画作成。アンジアマンギラーナでラミー種子1250個収集。

2009年
マダガスカル政変。
アイアイ 5月22日、上野動物園でソアとマミルアの孫アラ♀誕生。
ラミー アンジアマンギラーナでラミー種子100個収集して、苗畑をはじめるが発芽せず。

2010年
ラミー苗畑完成の年
アイアイ 9月22日、上野動物園のマミルア・ソアの第5子ファリー♂誕生。
ラミー 「 3月19日金曜日、晴れ、夜雨。赤松さんはせっせとラミーの種子の数を数えているが、今回アンカラミベからもってきた種子が2300個、一昨年、アンジアマンギラーナからもって帰ったラミーの種子が750個、合計3050個であると報告。また、アンジアマンギラーナで2008年に採集したラミー種子500個の苗床には30本の苗が発芽し、2010年採集のラミーの種子2300個分の苗床をつくった、とのこと。」(日誌)
つまり、アンタナナリヴにはアンカラミベの種子2300個、アンジアマンギラーナの種子750個があり、アンジアマンギラーナの苗床に2008年採集分のラミー種子500個と2010年採集分のラミー2300個とがあり、2010年のラミー種子は合計5850個になった。
(写真下:2010年3月、バナナの日陰にラミーの種子植え付け)


「10月11日、アンジアマンギラーナでラミーの苗を見る。爆発するような喜び!1500本の苗ができていた。」(日誌)(写真下:ラミーの苗畑)
ラミー1000本、アカシア2000本をアンジアマンギラーナ川水源地域とマナサムディ植林地に植樹。ラミーの苗木60本をアンタナナリヴ郊外のアンブヒジャヌ(石原さんによる「マダガスカルで一番美しい村」プロジェクト)に植えた。


2011年
「12月6日、アンジアマンギラーナ苗畑でラミーの苗、数百本を確認。」(日誌)
ラミーはアンタナナリヴで170本発芽(種子3050個のうち)。
アンジアマンギラーナ保護区内にラミー540本、調査基地周辺にさらに100本を植樹(うち4本を2023年12月に確認)。ラミーの種子830個をアンジアマンギラーナ苗畑に植え付け。

2012年
マダガスカルアイアイ・ファンド代表ジルベールさんがチンバザザ公園園長就任。
アイアイ 5月11日、上野動物園でマミルア・ソアの第6子ティーア♀誕生。
ラミー 3月、サイクロン直撃によりアンジアマンギラーナ苗畑全滅、調査基地倒壊。苗畑再整備、ラミー5000個収集。

2013年
スアビナ苗畑とアンカラミベのラミー全滅
アイアイ 11月17日、アンジアマンギラーナ監視森林で親子のアイアイを確認。
ラミー 11月、スアビナ苗畑はネズミのため全滅。
アンジアマンギラーナ川流域に2010年に植えたラミーが100本以上、藪の中から伸び出しているのを確認。
「11月18日、まったく残念なことにアンカラミベの谷間にはラミーの影さえ、なにひとつなかった。マダガスカルでの失望に最後の1点を加えたという感じだった。」(日誌)


2014年
スアビナのラミーNo.1にメンフクロウ宿る!(写真上)
アイアイ 7月2日、上野動物園のニリナ(ソアとマミルアの第二子♂)がサンディエゴ動物園へ。
ラミー 3月、アカシア1635本、ラミー802本を植え、ラミーとアカシアの苗畑を作る。ラミーの苗作りの募金を始める。種子収集5000個(計画)。

2015年
マナサムディ山頂部への植林開始。
アイアイ 9月10日、上野動物園のマミルア、ソアのペアの孫アラ♀が「ダレル野生動物保全トラスト」(ジャージー動物園)へ。マダガスカルから旅だったアイアイたちが日本を経由して世界に羽ばたく実に壮大な光景が実現した。
ラミー 7月1日、国土緑化機構の「緑の募金」よりアンジアマンギラーナでの植林計画への助成決定。3ヘクタールにラミーなど1800本を植える(うちラミー480本)。
(写真下:アンジアマンギラーナ苗畑で2015年6月に発芽したラミー)


2016年
アイアイ 東京動物園協会「野生生物保全基金」の助成により、マダガスカル北部でのアイアイの分布調査を実施。
ラミー ラミー種子2000個収集。植林を5ヘクタールへ(内ラミー800本)。

2017年
アイアイ 9月、「レムールセンター」(デューク大学)でアイアイの飼育状態を視察。10月、ベチブカ川南方に未調査の大森林の情報。アンタナナリヴ大学によるアイアイの生態調査に協力。

ラミー 3月、濱口光さんによるメトド・マンギラナ(Methode Mangiranaひかる植林法)実施。小規模集約的にアカシア、マンゴー、ラミー、カシューなどそれぞれ100本ずつ植樹した。(2023年11月、ラミー36本を確認)
12月、「緑の募金公募事業」助成により5ヘクタールの植林(内ラミー800本)。

2018年
アイアイ 3月27日、ソアの子トウニィー♀誕生。
写真下:「アイアイの夢」(講師:島泰三)『どうぶつと動物園』2018年より


ラミー「緑の募金公募事業」助成4年目、5ヘクタールに植林(内ラミー800本)。合計18ヘクタールの保護区南端の境界として約2キロメートルの柵建設

2019年
アイアイ 保護区内のアイアイ(1歳♂)にテレメトリーの首輪が装着されたまま放置されていることが分かり、首輪を取り外すための救出隊結成。
ラミー 「緑の募金公募事業」助成5年目、5ヘクタール(内ラミー800本)のほか、カシューとパパイヤ合計2000本を集落周辺の三地域にも植林。ラフィア、竹プロジェクト開始。
12月、メンフクロウが親子でスアビナのラミーに泊まる。

2020年、2021年
コロナの世界的流行により、マダガスカルへの渡航、活動は休止。

2022年 アイアイ 救出隊より「アイアイが元気だったので捕獲しない」と報告。 ラミー 5ヘクタールの植林を継続。ラミー800本。アンタナナリヴとアンジアマンギラーナの苗畑全体で、サッチャナヤシ、ラフィアヤシ、アカシア(4000本)、パパイヤ、カシューナッツ、ラミー、バオバブ、マンゴー、ブーゲンビリア、ハナキリンとラミー苗、合計1万本(計画)。

2023年
ラミー開花、結実の年!
マナサムディ植林地では、アカシア1000本と境界用にブーゲンビリア300本の植樹。苗畑のラミーはスアビナ20本、アンジアマンギラーナ60本のみ。
2023年1月、日本アイアイ・ファンド活動報告作成とアイオス映像データ(DVD24枚+わくわく動物ランド)とDVテープ元(2006年までのもの)を整理。
2月、報告映像作製と「ラミーの夢」PowerPoint原稿、およびYouTube構想。
3月、『レムリア物語』書き直し。アイオスの岩川千秋さん、亡くなる。『わくわく動物ランド』のチーフディレクターで、アイアイの撮影の最初からいっしょだった。
4月、赤松さんとYouTube開設。井筒監督の『「1968全共闘」プロジェクト』発足。
1968年当時物理学科にいて、のちに原発反対の弁護士として活躍した福武公子さん逝去(24日)の新聞報道。1970年以降まったく会ったことはなかったけれど、日本アイアイ・ファンドへの寄付を続けてくれた方だった。
5月、YouTube用「マダガスカルの見せたい映像」100本編集開始。
6月、8テラハードディスク購入。YouTube再生回数8586回。
7月、マダガスカルへの送金ができなくなった。
7月17日、YouTube:チャンネル登録者299人、82本動画、12.3万回の視聴、総再生時間2403時間。シファカとブラウンキツネザルの仲良し画像が9.7万回。
アイオスが撮影したマダガスカル関係映像をYouTubeに使うことを関係者に打診し、大津一美さん(元アイオス社長)は「どうぞ、どうぞ」と快諾(大津さんは12月16日に逝去されました)。
8月、マダガスカル渡航準備のため、ランクルの部品調達開始。
10月、マダガスカル植林指導者アジャさんへ11月から植林地の整備開始を指示。
11月、マダガスカルデータ整理用に1テラのSSD購入。軽い!ジンバル購入はやめ。
11月15日水 成田出発20:30。16日木 13:40イヴァト着。
20日月 10時出発、マエバタナナ午後6時着。
21日火 マエバタナナ発午前5時、アンジアマンギラーナ着午後3時。アンタナナリヴーアンジアマンギラーナ合計18時間!
25日土 アンツイヒ午前5時発、マジュンガ着午後6時。
27日月 午前7時アジャさん宅での朝食のあと、マジュンガ発。マエバタナナ泊。
28日火 午前5時マエバタナナ発、13:30アンタナナリヴで昼食。
12月1日金 インフラ崩壊の国である。電気、水道、ガス、車と問題には事欠かない。
14日木 アンタナナリヴ発14:50 15日金 成田着19:30
21日 この日、貝澤二朗さん逝去の連絡。貝澤さんは人類学教室の先輩で『親指はなぜ太いのか』の英訳を5年かけて完成してくださった方です。

Mother Tree Project (ラミー母樹基地プロジェクト)―ラミーの種子の自家生産からマダガスカル全土への配布―
植林用のラミーの種子は、当初アンジアマンギラーナ川源流域の保護区内アナラランベ(大きな森)のラミーから採集していました。しかし、ここでの種子数は限られているので、アンツイヒ北方のアンカラミベに種子供給源を求めました。2010年に赤松さんによって4600個の種子が収集され、アンジアマンギラーナ苗畑では一度に千本以上のラミー苗を供給できるようになりました。
しかし、2013年以降はアンカラミベのラミーは伐採されて姿を消し、2016年には保護区内でラミー種子を2000個収集するだけでした。その後は年々800本のラミー植樹を継続するのが精いっぱいでした。
2020年から2022年のコロナによる活動停止期間の間に保護区内のラミー種子収集もむつかしくなり、2023年には二つの苗畑に合計80本のラミーの苗が残るだけになり、ラミー植林は夢と消えようとしていたのです。しかし、「チンバザザ動植物園とスアビナのラミーが19歳となり、あと数年、早ければ来年にも種子供給が自前でできることになります。そうなれば、種子供給、苗畑での大型苗の育成、乾燥地での植栽と、一貫したラミーの植林が可能です」と2017年報告の予測が現実になりました。

Mother Tree Projectの計画内容
第一に、首都とアンジアマンギラーナ苗畑を維持、拡大し、ラミー種子・苗を監視森林の周辺村落5コミューン(10フクンタニ=村)に配布する。第二に、種子生産の母樹(Mother Tree)基地を中央高地3カ所、西海岸2カ所、東海岸1カ所合計6カ所に拡大する。第三に、これらの母樹基地からラミーの種子・苗の頒布をマダガスカル全土に拡大する。
このプロジェクトは「Father Tree Project」に続き、3年後にはスアビナで大きくなったラミーを使って、遠洋航海用のアウトリガーカヌーを建造する(予定)。


写真上:マダガスカル北西部アンキフィ村でカヌーの制作を見るお三方(2012年)。


写真上:2023年12月9日のスアビナのラミー(撮影:RA. Bruno)

ファンドメンバー、ご寄附をお寄せくださった皆さまにお送りしております「2023年の日本アイアイ・ファンド活動報告書」の完全版はPDFでご覧いただけます(別窓でPDFファイルが開きます)。

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